英検1級二次試験受験記① ~準備編~

英語総合トレーニング塾 2024年度受講生募集中

 

英検1級二次試験受験記① ~準備編~

二次試験対策として考えたこと

一次試験は無事突破したものの、二次試験に関しては自信がありませんでした。
スピーキングは4技能の中で最も自信がなかったからです。
過去問を軽く確認したところ、すぐに2分間話せそうなトピックはありませんでした。
やはり準備は必要だろうと感じました。

しかし同時に、英検二次突破のためだけに多くの時間を使うことはなるべく避けたいという気持ちもありました。
いくら試験に特化した対策をしても、実際に英語を話す時のプラスにならなければ私にとっては意味がありません。
初めての受験ということで、自分の英語力でいったい何点取れるのか、ということにも興味がありました。
そこで、英検二次試験の傾向に合わせながらも、様々な場面で英語を話す時に役立つ力をつけることを目標にして、勉強をすることにしました。

試験内容を知る

まずは試験について知ることが必要だと考え、本やネットで情報を集めました。
英検1級二次試験の流れは、1分間の会話 → 1分間でスピーチのトピック決め → 2分間のショートスピーチ → スピーチに関してのQ & Aというものです。
配点は、ショートスピーチ30点、インタラクション(Q & A)30点、文法+語彙20点、発音20点となっています。
(2012年当時のデータです。)

Short Speech 30
Interaction 30
Grammar and Vocabulary 20
Pronunciation 20

試験官は日本人と英語のネイティブが1人ずつです。
採点は、各4項目で1~5の5段階評価になっています。
ブログ等で公開されている二次試験受験者の点数の詳細や、試験官が採点する時の実用性を考えると、細かい配点まで予測することができました。
配点が30点の「ショートスピーチ」と「インタラクション」は5段階評価の1つが3点分、配点が20点の「文法+語彙」と「発音」は、5段階評価1つが2点分になります。

例えば、ショートスピーチでネイティブの試験官から5段階中4の評価をもらうとします。
1つ3点ですから、4×3=12。ネイティブからの評価は12点になります。日本人の試験官からは5段階中5をもらうとします。
そうすると5×3=15点。二人の評価を合わせると、ショートスピーチは27点ということになるのです。
文法+語彙と発音では、二人の試験官から4の評価をもらった場合、4×2×2=16。20点中16点をもらえることになります。

合格最低点は60点ですので、仮にバランスよく60点を取るならば(そんな必要は全くありませんが)、全ての項目で5段階中3の評価をもらえば良いのです。
その時のショートスピーチ、インタラクション、文法+語彙、発音の得点はそれぞれ、18点、18点、12点、12点となります。
つまり、5段階中2や1の評価をもらう項目が1つもなければ、高得点は出ないかもしれませんが、確実に受かることができるのです。
(現在では採点基準が変更されていて、全項目で6割の点数では合格できないようですが、合格に求められる力はほぼ同じと考えられます。)

私の二次対策の方針

ではどのような対策をすれば良いでしょうか。
私が重点を置いたのはショートスピーチです。
いくら英語力が高い人でも、スピーチが満足にできなければ挽回するのは簡単ではないでしょう。
ショートスピーチの対策では3つのポイントに集中することにしました。

  1. 2分間話し続けることに慣れる
  2. 英語らしい情報の伝え方をする
  3. 広く話題になっているニュースについて自分の意見を持つ

1. 2分間話し続けることに慣れる

最初に考えたポイントは、2分間話し続けること慣れる必要がある、ということです。
普段英語を話す時は、1人で2分間喋り続けるという状況はほとんどありません。
大学院の授業でも、意見を2分間話し続けたら長すぎると思います。
プレゼンテーションでは長く話すものの、あらかじめ話す内容がまとまっている点で二次試験とは条件が異なります。
2分間話続けるのに慣れること、これを最初の目標にしました。

2. 英語らしい情報の伝え方をする

2番目のポイントは、英語らしい情報の伝え方をすることです。
日本語と英語では情報を伝える順番が異なります。
日本語では説明や理由が先に来て、最後に言いたいこと(主張、あるいは結論)が来ます。
それに対して英語では、最初に言いたいことを言い、それから理由を述べたり、説明をしたり、細かい情報をつけたしたりします。

過去の体験談等を読んでいると、日本語の情報の伝え方で話した人はスピーチの点数が低く出ているようでした。
少なくともネイティブの試験官は、英語での情報の伝え方がわかっているかどうかを採点基準の1つにしているのでしょう。

3. 広く話題になっているニュースについて自分の意見を持つ

最後のポイントは、試験で出題されるようなトピックについて自分の意見を持つことです。
英検二次試験では、頻繁にニュースに出てくるような有名な話題はそれほど出題されません。
また、特定の話題ではなく、広い解釈が可能な抽象的な話題が多いようです。
そのようなトピックを探し、自分の意見を考えておけば、即興でスピーチを組み立てるのに役立つだろうと思いました。

したくなかった対策

私が絶対にしたくなかった対策は、模範解答を音読(+暗記)し、そこからアイディアを採用することです。
このような勉強をすれば試験の点数は上がるのかもしれませんが、普通の状況で意見を求められた時に応用が利きません。
さらにこの勉強法だと、勉強したことについては話せてもそれ以外のトピックが出たらどうしようもない、という不安につながる可能性があります。
そもそも暗記や他人のアイディアに頼ることは、本来あるべきスピーキング力とは異なるものでしょう。
実際に、模範解答は一度も読みませんでした。

スピーチの原稿を書くことも避けました。
スピーキングとライティングでは、使用する文の構造が異なります。
即興で話す時に、論文で用いるような複雑な文を話す人はあまりいないですよね。
論文ばかり読んでいるとそうなるかもしれませんが…なるべく普段話すようにスピーチをしたいと考え、原稿は書かないことにしました。

私の対策

話すことに慣れる

1つめのポイントとしてあげた、2分間話し続けるのに慣れるため、家にいる時に1人で英語を口にすることから始めました。
1人で話しても、実際会話になるとうまくいかないものなのですが、英検対策としては効果的です。
スピーチでは、途中で聞き手にさえぎられることはありません。
この練習をする時には話す内容は気にせず、一定時間英語を話し続けることを意識しました。
しばらく続けるうちに、英語がスムーズに口から出てくると感じるようになりました。
話す前には英語を聞いて、日本語のリズム、発音にならないように気をつけました。

二次試験の前後には大学院の授業が週に2回あり、ほぼ毎回10分程度発表をする時間がありました。
この発表を繰り返しているうちに英語を話すことに慣れ、言いかけたことはなんとか最後まで話せるようになってきました。

英語らしい情報の伝え方をする

2つめのポイントであるスピーチ構成に関しては、リーディングやライティングの勉強からほぼ理解できていました。
後はスピーチの時にそれを使う練習をするだけでした。
この頃偶然に、知り合いのアメリカ人が、昔大学でパブリックスピーキングを専攻していたことがわかりました。
そこで、その人にスピーチ構成について教えてもらうことになりました。
知っていることも多かったのですが、主張の後の説明は簡単でわかりやすくなければならないことを新たに知りました。
それまで話すことを難しく考えすぎていたかもしれません。
試験1週間前までに2回講義をしてもらいました。

スピーチ練習

3回目のレッスンは試験の3日前でした。
この時は講義ではなく、急遽、即興でスピーチ練習をすることになりました。
その場でトピックが1つ与えられ、1分考えて2分間しゃべるという形です。
(英検では5つのトピックから1つを選ぶ形ですので、本番よりも厳しい条件です。)
最初に見本も見せてもらいました。

1つ目のトピックは、オバマ大統領は再選するか?でした。
(もちろん、英検で出題されるようなトピックではありません。)
詳しくないトピックだと本当に厳しいですね。
理由はかろうじて2つ思いつきましたが、理由をサポートする情報が見つからず、途中で止まりながら1分しか話せませんでした。

日本に関しての話題ならしゃべれると思う、という話をしたところ、次は原発再稼動に賛成か反対かでスピーチをすることになりました。
これは普段から考えていた(もちろん日本語でです。)こともあり、構成を考えて話すことができました。
言い直したり、上手く表現できない部分はあったものの、2分間止まらずに話し続ける内容がありました。
ただ、多くの日本人が考えたことのあるトピックであるため、英検には出題されないでしょう。

原発については英検に出題されないだろうということをその人に伝えると、過去問を見せてほしいと言われました。
その時は過去問を持っていなかったので、たまたま覚えていたトピック、社内での英語公用語化について、というのが昔出題されていたことを話しました。
すると、今度はそれがスピーチのトピックになりました。
社内での英語公用語化については、英語教育に関わっている人間には話す内容がたくさんあります。
専門分野と言っても良いでしょう。
論理構成を考えながら2分間話し続けることができました。
この話題ならもっと長く話せる気がします。

この時の3回のスピーチが、実際に人前で行った二次試験練習の全てです。
スピーチ練習を3回続けた結果、どれだけ話せば2分かかるかが感覚としてわかるようになりました。
試験前日には、家で過去問を見て、1分間で5つの中からトピック1つを選んで2分間喋ってみる、という本番と同様の練習を数回しました。
しかし、やはり本番とは気持ちの入り方が違い、うまく話すことはできませんでした。
それでも前日の時点までに、話せるトピックが見つかればおそらく受かるだろうという自信はついていました。

ニュースについて自分の意見を持つ

3つ目のポイントの、広く話題になっているニュースについて自分の意見を持つことは、大変な作業でした。
夜、トピックについて考え始めると、ずっと考えてしまって寝られないことが何度もありました。

私が行った方法は、新聞やネットから出題されそうなテーマを見つけ、それについて賛成、または反対の意見と説明を考えることです。
しばらく考えても理由が2つ以上見つからない場合は、電子辞書についている百科辞典の助けを借りましたが、出来る限り自力でするようにしました。
自分で考えた意見の方が自信を持ってスムーズに話せると思ったからです。
もう一つ苦労したことは、言いたい内容が日本語で浮かんでも、それに該当する英語がわからないことです。
その時は辞書を使い、英語の表現を覚えるようにしました。

このようにして、20前後の話題について意見を考えました。
理由を書き出したのは、そのうち半分くらいだったと思います。
20という数字は決して多くはないですが、本番で短い時間に意見をまとめるための練習に効果的だったと思います。

試験前日になって、過去問をしっかり見ました。
この時は過去6回分の全てで、1分以内で理由を2つ、あるいは3つ考えられるトピックがあるかどうかのチェックをしました。
理由と構成を考えるのが中心で、実際にスピーチの練習をしたのはそのうち数回です。
5つのトピックの中で、だいたい1つは話せるものが入っていることがわかりました。
しかし中には1つも話せるトピックが見つからない回もあり、そのような回のみを取り出して、いずれか1つのトピックについては話せるように理由をまとめました。

アメリカ人の意見の述べ方を参考にする

その他には、NPR NEWSのTalk of the Nationという番組が非常に参考になりました。
このラジオ番組は、様々な分野の専門家にインタビューをするもので、主にアメリカの社会問題を扱っています。
番組の途中からは一般の人から質問、意見を募集し、それについて専門家が答えていきます。
アメリカ人が意見を述べる時にどのような話し方をするのか、英検対策と考えなくても参考になる部分は多いと思います。
残念ながら番組自体は数年前に終わってしまいましたが、ホームページから過去の放送を聞くことはできます。

他の3項目について

上で述べたように、ショートスピーチにはそれなりに時間を割きました。
しかし試験には他にインタラクション、文法+語彙、発音という3つの評価項目があります。
いろいろ考えた結果、この3項目の対策はしないことにしました。

インタラクションは、どれだけ質問に対して受け答えができるかを見るものです。
普段英語を話す機会があれば、それほど難しいことではないはずです。
また、採点基準がわからない以上、どのような答え方をすれば高得点につながるかはわかりません。
文法+語彙と発音に関しては、短期間でどうにかなるものではありません。
まずは自分の力を試し、落ちたらその時に対策を考えれば良いことだと思い、スピーチだけの準備で試験に挑むことに決めました。

英検1級二次試験受験記② ~当日編~