英語高地トレーニング

あらゆる場面で役立つ英語力を身に付けると同時に、英検1級、TOEIC990点を取得するための方法を
世界の英語教育研究の結果を参考にしながら紹介します。
対象:英検準1級、1級、TOEIC700点以上を目指す人

「文章を読む」とは
~語彙力は本当に必要か?~

 ある程度の語彙が身についても、読解の際には、未知の単語が含まれた文章を読まなければなりません。実際、英単語は膨大な数があり、単語単独での学習ではとてもカバーできませんし、単語帳で覚えた単語全てを記憶し続けておくことは不可能です。今回は、語彙力に頼らずに、文脈を利用して読み進める方法を紹介します。

課題文

 まず、以下の文に、辞書を使わずに目を通してみてください。

In Defense of ‘Bad’ Wine

Wine aficionados tend to scoff at cheap, mass-produced bottles–in part because the wine inside is often augmented with various powders, oils, salts and concentrates to make it more palatable to the average drinker. But in her new book, Cork Dork, Bianca Bosker points out that such chemical manipulation has always been part of winemaking. (『TIME』(2017年4月3日号)p16)


 知らない単語がいくつか含まれていたのではないでしょうか。ここでは、 aficionados, scoff (at), augment, concentrates, palatable, manipulation を知らないものとして話を進めます。(人によっては concentrates や manipulation は知っているかもしれません。)

課題文の意味

 まず、大まかな意味を確認しておきましょう。タイトル In Defense of ‘Bad’ Wine 「‘質の悪いワイン’を擁護する」くらいですね。

 そして次の文です。 Wine aficionados tend to scoff at cheap, mass-produced bottles–in part because the wine inside is often augmented with various powders, oils, salts and concentrates to make it more palatable to the average drinker.

大意「ワインの aficionados は、安く大量生産されているワインを scoff する傾向がある。一つの理由としては、そういう安ワインを一般の人にとって、より palatable にするために、ワインの中には様々なものが augment されていることが多いからだ。」

 二文目です。 But in her new book, Cork Dork, Bianca Bosker points out that such chemical manipulation has always been part of winemaking.

大意「しかし、Bianca Boskerは、そのような化学的 manipulation は、常にワイン造りの一部であった、と指摘している。」

 残りの文法、単語を正確に把握できると、上のような内容になります。(訳は説明のためのものであり、厳密なものではありません。)

文のはたらきを考える

 何も考えずに読むと、知らない単語を推測するのは難しいため、それぞれの文の文中での働きを考えてみます。

 まず、タイトルからわかるのは、この文章では、「質の悪いワインにも良い点があるのだ。」ということを述べるとわかりますね。そして一文目。tend to に注目します。何気ない言葉ですが、「~する傾向がある」ということは、一般的なことを述べている可能性が高いです。

 そして、第二文を見ると、Butから始まっています。以上のことから、この二つの文の働きがわかります。一文目が一般論(世間では良くこう言われているけれども)で、二文目が主張(実際は~なんです。)に該当します。

 質の悪いワインは、一般的にはマイナスイメージなものですよね。「でも実際には、違うのだ」と筆者は言いたいのです。これをふまえて、さきほどのわからない単語を推測してみましょう。

未知語の推測

 英文と訳を再度載せておきます。

Wine aficionados tend to scoff at cheap, mass-produced bottles–in part because the wine inside is often augmented with various powders, oils, salts and concentrates to make it more palatable to the average drinker.

「ワインの aficionados は、安く大量生産されているワインを scoff する傾向がある。一つの理由としては、そういう安ワインを一般の人にとって、より palatable にするために、ワインの中には様々なものが augment されていることが多いからだ。」

 一文目が一般論であることを考慮すると、 scoff はマイナスのイメージです。したがって、安い大量生産のワインを「悪く言う」くらいの意味であると推測可能です。続いて理由の部分ですが、一般の人にとって、「飲みやすく」するために、ワインに添加物を「入れる」。だと自然ですね。

 aficionados はやや推測がしづらいですが、一般の人ではなさそうです。一般人は添加物が多いワインの方が飲みやすいですから。ということは、ワインに「精通している人」くらいになります。

 次に concentrates の意味を考えてみましょう。この単語の推測は難しいかもしれません。しかし、並列されている単語を考えると、文中での働きは無理なくつかめます。「一般の人により飲みやすくするために、ワインに添加物(パウダー、油、塩、concentrates)を入れる」ですので、添加物の一種とさえ理解できれば十分です。

 実際には、concentrate という動詞に「濃縮する」という意味があることを知っていれば、「濃縮物」であることはわかりますが、添加物の一種ととらえていようが、「濃縮物」という訳でとらえようが、文の理解度においては全く変わりません。

 続いて二文目に移ります。

But in her new book, Cork Dork, Bianca Bosker points out that such chemical manipulation has always been part of winemaking.

「しかし、Bianca Boskerは、そのような化学的 manipulation は、常にワイン造りの一部であった、と指摘している。」

 ここでは such に注目します。such「そのような」は、直前に出てきた具体的な内容をまとめる働きがありますので、一文目の添加物のことをさしています。そうすると、仮に manipulation の意味がわからなくても、such chemical manipulationは、「ワインに添加物を加えること」だと、はっきりわかるのです。

 実際は、manipulation「操作」ですが、上の意味のとりかたで問題なく文章を読み進めることができます。(逆に、化学的操作という訳にこだわると、意味がつかめなくなってしまいます。)

文のつながりがみえるか

 二文目は、訳だけを見ていると何が言いたいのかわかりにくいのではないでしょうか。そこで、一文目とのつながりを意識してみます。一文目は、「安ワインには添加物が入っているので良くない」、という一般論ですね。

 二文目は、それに対する主張(逆の意見)ですから、「しかし、化学的操作が昔から当たり前に行われているのであれば、安ワインに添加物を入れることは悪いことではない」という内容だと、自分で補って解釈しなければなりません。

 引用はここで終わっていますが、この後、どのような文が続くか、予想がつくでしょうか。

 英語では、次の文で直前の内容をより詳しく説明することが大原則です。ということは、ここでは、過去にどのような化学的操作が行われてきたのか、が具体的に説明されるはずですし、実際そのように続きます。

For centuries, even the finest winemakers have added ingredients like egg whites or sulfur dioxide to improve a wine’s flavor and prevent it from spoiling.

 egg whites や sulfur dioxide がわからないとしても、添加物の例としてあげられていることだけをおさえておけば、文としての意味はきちんととることができます。

 今回引用した箇所とその三つの文のつながりをまとめておきます。

In Defense of ‘Bad’ Wine

Wine aficionados tend to scoff at cheap, mass-produced bottles–in part because the wine inside is often augmented with various powders, oils, salts and concentrates to make it more palatable to the average drinker. But in her new book, Cork Dork, Bianca Bosker points out that such chemical manipulation has always been part of winemaking. For centuries, even the finest winemakers have added ingredients like egg whites or sulfur dioxide to improve a wine’s flavor and prevent it from spoiling.

一文目(一般論)
安ワインには添加物が含まれているという理由で、専門家は非難するものだ。

二文目(主張)
しかし、このような化学物質による操作は昔からあり、悪いことではない。

三文目(二文目の説明)
何世紀もの間、味の改善などのために、高級ワインにさえ添加物が使われてきた。


 このように文と文のつながりがみえると、読む前から、次の文のはたらきを予測することも可能になります。それだけでなく、文章の重要なポイントをつかめるため、一読した後に、内容が頭に残りやすくなるのです。(「英語総合トレーニング塾」では、このような文のつながりを重視した読解指導を行っています。)

文章を読む時に必要なこと

 今回出てきた、一般論 → 主張 → 説明 という流れは、英語では非常に良く使用されるものですが、日本人でそこを意識して読める人は多くありません。英語は、文のつながりにきちんとした決まりがあることがほとんどですので、それを意識して読めるかどうかで、理解度は大きく変わってきます。

 そう考えると、読解において、単語力というのはそれほど重要でもない、ということもわかってきます。もちろん、なるべく多く単語を知っているに越したことはありませんし、最低限の語彙力は必要です。大まかな目安では、文中の95~98%程度は知らないと、文章が読みにくくなることが多いようです。

 しかし実際には、読んでいる時に未知の単語に遭遇することは避けられません。その時には、文脈や文のつながり等の情報を利用して、理解度を損なわずに読み進めることができるかどうか、が求められるのです。

 上で述べたように読むことができれば、文の意味はほぼ100%理解できています。単語をいくつも知らなかったのに、文の意味が正確にとれている。不思議かもしれませんが、実際こういうことは起こり得るということを覚えておいてください。(念のために書いておきますと、今回は説明のしやすい部分を引用しましたので、現実的にはここまで推測できるわけではありません。)

訳読・単語学習の弊害

 単語が全部わかっていても、文のつながりがみえていない人には、上の文は完全には理解できません。日本人の学習者は、たいていの場合、訳はきちんとできます。しかし、文としてのつながりがみえていないため、著者がいったい何を言いたいのかを全くつかめない人も、かなりの割合で存在しています。

 和訳とは、文単位で、その文の意味することを大雑把に日本語に置き換えているだけの作業にすぎません。本当の読解とは、文と文のつながりを考え、ある文が文中でどのような働きをしているか、の理解までも含まれるのです。そして、抽象的な文章になればなるほど、この力がなければ太刀打ちできなくなってしまいます。

 個々の単語と文の構造がとれているかを確認する方法として、和訳は大変に優れています。ただ、上で述べた通り、和訳ができるだけでは、読解としては不十分です。和訳をするだけで安心してしまって、理解ができていないのに読み進めている。非常に多く見られるパターンです。しかしそういった勉強法では、いつまでたっても読解力は向上しません。常に文のつながりを意識しながら読む習慣を身につけ、読解力を伸ばしていってください。

 同様に、「これだけ短い文章に知らない単語が複数あるのだがら、もっと単語を勉強しなければいけない」と考えることも、方向性が違っています。単語をいくら勉強しても、文のつながりはみえるようになりません。そして、日本人に一番足りていないであろう部分は、この文のつながりの理解なのです。単語学習を中心に行ってきた人は、これまでの学習法を見直してみてはいかがでしょうか。

私にとってのリーディングとは

 リーディングの目的が、「文章の内容を把握する」ことであるならば、知らない単語があることは問題ではありません。文章の内容理解の確率をあげるために、より高度な語彙も必要になることがあるだけだ、と考えてみてはどうでしょうか。それよりも、ある一定レベルに達したら、いかに文章を読むかが重要です。

 正直なところ、私にとって、上の文の aficionados は知らない単語でした。scoff と augment は、完全には定着していない単語でした。(sulfur dioxide がわからなかったのは言うまでもありません。)語彙力はたいしたことがないのです。しかし、文のつながりを意識して、言いたいことを把握しながら読んだため、辞書を使わずにほぼ完全に意味が理解できました。

 この程度の語彙力であっても、正しい読み方をすることで、どんな文章でも読みこなすことができています。当然ですが、語彙が非常に難しい記事では辞書をそれなりに使いますし、場合によっては、全く推測できない単語が文中に含まれていることもよくあります。

 しかし、英語のノンネイティブとして読解力で困ったことはありません。アメリカの大学院で読む文章であっても、きちんとした読み方をすれば、時にネイティブよりも正確に文章の内容を理解していることさえありました。個人的に、非常に実用的な読み方だと実感しています。

 今後、日本人が習得すべき読解方法として、この方法を世に広めていきたいと思っています。

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