多読学習の進め方

多読学習の進め方

多読で注意すべきこと

多読の目的は、1. 多くの英文に触れること、2. 読むことによって何か情報を得ること、です。この2つのルールさえ意識しておけば、たいていはうまくいくはずです。
しかし、受験英語の影響で、どんなものでも精読したがる傾向のある人が多くいます。
そのような人は、多読をしているつもりでいつも精読をしてしまいます。

丁寧に読むことも大切ですが、精読だけではいつまでたっても多読をできるようにはなりません。
何年も努力して勉強した結果、高度な英文が読めるようになっても、1時間に数ページしか英語を読めないようでは、本当の意味で英語を『読めて』いることにはならないと思います。
精読に慣れすぎてしまっている人は、発想を変える必要があります。正しく多読を続けるためのポイントを以下にまとめてみました。

  • わからない単語は気にしないようにする
  • 調べた単語は無理に覚えようとしない
  • 全てを理解しようとしない
  • 問題を解くための読解と多読を区別する

わからない単語は気にしないようにする

まず、文中のわからない単語全てを調べようと思わないでください。
単語に意識が向けば向くほど、内容ではなく、英文の形に意識が向かいます。
その結果、内容を理解するために英語を読むことができなくなってしまいます。
わからない単語は無視するつもりで読んでください。
もちろん時々辞書を使ってもかまいません。難しめのものであれば、辞書の助けがなければ読めないでしょう。
文章全体の理解に必要な範囲で辞書を使用するのが良いと思います。

調べた単語は無理に覚えようとしない

多読の時には、調べた単語は一切覚えない、と割り切ったほうが読むことに集中できます。
繰り返し出てくる単語や何度も調べた単語は、少しずつ自然に身に付くものです。
もし短期間で語彙力をアップさせたければ、多読とは別に単語を覚える時間を取ればよいのです。
多読では多読の目的を優先してください。

全てを理解しようとしない

読んだこと全てを理解しようと思わないでください。
読んだ後に理解度確認テストがあるわけでもありません。日本語で普通に文章を読む時と同じように読んでください。
仮に、ある記事が全くわからなくても、何年も多読を続けていればそのうちわかるようになる日が来ます。
短期的な成果を期待せずに気長に続けることがコツです。

問題を解くための読解と多読を区別する

ブログ等で非常に多く見かける学習法の一つに、問題形式の教材をたくさんこなす、というものがあります。
これはこれでテスト対策としては多少効果があるかもしれません。
しかしこのような学習は多読と区別して考えてください。
問題に正解するための読み方は、一般的な多読の読み方とは大きく異なります。

良い点数を取りたければ、細かい部分まで見落とさないよう注意深く、ゆっくり読みますね。
多読でそのような読み方をすることはほとんどありません。
多読では、リラックスした状態で、だいたいの内容を理解するような読み方になります。
ネットでなんとなく記事を読んでいる状態だと思ってください。同じ事を英語でするのが多読です。

私はテスト対策のためのリーディングは、リーディングの学習として数えていません。
テスト対策ばかりをして、自分はリーディングを十分にしている、と勘違いしないように気をつけてください。

どれだけの量を読めば効果がある?

この問いに対する絶対的な答えはありません。多ければ多いほど効果があります。とは言っても、そう言われて、じゃあとにかくたくさん読んでみよう、と思える人はほとんどいないでしょう。
やはり、個人的に何かしらの目安を決めておくのが良いと思います。

多読の研究で良く用いられる目安は、1週間に1冊、または2冊というものです。
しかし、30ページの本を読むのと500ページの本を読むのとでは、同じ1冊でも重みが違いますよね。
雑誌や新聞の数え方も難しくなります。この目安だと、ノルマをこなすために薄く簡単な本を選び続ける可能性が出てきてしまいます。

多読指導で有名なSSSのサイトによれば、1年に100万語というのが目安となっています。
100万語というと、1ページ300語だとして3,000ページちょっと。
一般向けの小説に換算すれば年間10冊と言ったところでしょうか。
これも良い目安になりますが、私がこの目安で読んでいた頃は、何かを読むたびに語数が気になってしまいました。
1冊の本の語数を調べるのに数十分かけたこともあります。細かい数字が気になる人にはあまり向かない方法かもしれません。

1週間に何時間読むかを決める

では、どうすれば良いでしょうか。私がすすめる目安は、多読をする時間を決めることです。
英語力を伸ばすために(あるいは何か情報を得るために)読むわけですから、日常的に一定時間リーディングをする必要があります。1回の読書で1時間読むとします。
様々な都合から毎日読むことは難しいでしょう。
週に4~5日読む時間が確保できると考えると、1週間に4~5時間。まずはこれくらいが無理のない目標になるのではないでしょうか。

読む時間を目安にすると、本の難易度や読解スピードを気にする必要がなくなります。
学習記録をつけたければ、読み終わった後に読書した時間を書いておくだけですみます。
目標を達成できたかどうかもすぐに確認できます。

自分で目安を決めたら、まずはそれを半年ほど続けてみてください。
半年後には英語が以前よりもスムーズに読めるようになっていることに気づくはずです。
(読んだ直後には、英語で考えられるようになっていることもあります!)多読に慣れてきたら読む時間を増やしても良いですし、リスニングの時間を増やしても良いと思います。

教材の選び方

読みたいものを読む

多読で一番大切なことは、読みたいものを読むことです。学校の課題を別にすれば、興味のないものを読んでも長続きしません。
どんな内容なのかぜひ知りたい、という本を見つけることが大切です。
極端なことを言うと、本当に読みたいものが見つかれば、それが易しかろうが難しかろうがあまり関係ありません。
読んでいて楽しい、と思えるものを見つけてみてください。

易しいものから始める

基本的には、始めは易しいものを選ぶのが良いとされています。
易しいものとは、文全体の98%以上の単語がわかるレベルのものです。
つまり1ページに300語あった場合、知らない単語が6語以内ということです。
このレベルの本を読めば、主に読解速度向上に効果があるようです。同じ単語を繰り返し見ることによって、見た瞬間に意味がわかる単語が増えるからです。

受験勉強で難しい英語を読むせいかどうかはわかりませんが、日本では、易しい英語を読むことに抵抗がある人が多いようです。
しかし読解速度向上という点から見れば、易しい文章を読むことにも大きな意味があります

難しいものへ移行していく

易しいものを読むことが重要ではあるのですが、いつまでも易しいものばかり読み続けていても、難しい文章は読めないままでしょう。
少しずつ文章のレベルを上げていく必要があります。
難しい文章の目安は、文全体の95~98%の単語がわかるレベルです。
1ページ300語なら、知らない単語が6~15語です。
1ページ15語も知らないと、読むのがけっこうしんどいですね。このような時は辞書を使いながら読んでもかまいません。

ただし、難しいものとは言っても、文全体の10%以上単語がわからない(1ページ300語のうち30語以上がわからない)場合は、読み進めることが非常に難しくなります。
仮に読むことができたとしても、量をこなすことはできません。参考までに、英語教育の世界では、文全体の5%以上の単語がわからない状態での読書を精読として扱っています。特別な場合を除いて、多読ではレベルの高すぎるものは読まないほうが良いでしょう。

様々なジャンルのものを読む

読み物のジャンルの幅を広げることも大切です。
自分は小説にしか興味はない、という人はひたすら小説だけを読むのでもかまいませんが、様々な種類の英語を読める方が実際に役立ちます。
特に英検1級の読解問題で苦労したくなければ、新聞やニュース雑誌を多読する必要があります。
新聞や雑誌には自分に興味のない記事も載っていて、読めば読むほど知識と語彙を増やすことができます。

上で述べたことと矛盾するようですが、何か一つ得意分野があることも役立ちます。
私の場合初めはトレーニング関係の本でした。今では英語教育関係の本です。
得意な分野の本はすらすら読めますから、リーディングの量を確保するのに最適です。
一方で、同じ分野ばかり読んでいると、出てくる語彙や表現、テーマが似通ったものになりがちです。
得意なものもそうでないものも、バランスよく組み合わせてください。

自分に合った読み方を見つける

ここまで多読の基本的なやり方を説明してきましたが、たくさん読むことができるのであれば、この方法に従う必要は全くありません。
私の場合、多読を始めてからしばらくはネイティブ用の本ばかり読んでいました。
少しずつレベルを上げていく方法を知らなかったのと、易しい教材を読むことの重要性を知らなかったからです。

人によっては、ノンネイティブ向けに書かれた教材なんかで勉強したくない、と考える人もいるでしょう。
そのような人は、どんどんネイティブ向けの英語に挑戦してみてください。
初めは苦労することも多いと思いますが、いずれスムーズに読めるようになります。

興味のあるもの、内容を知っているものであれば、レベル的に難しくても読める可能性が高くなります。
例えば、自分が良く知っている分野の記事や本、日本語で読んだことのある本、映画を観て内容を知っている本を読んでみてください。驚くほど簡単に読めるものがあるかもしれません。

あるいは、絶対に読めるようになってやろうという強い意志があれば、どんなに難しくても読み続けることができるかもしれません。
私にはそこまでの意志がなく、多読が軌道に乗るまでに何年もかかりました。
何か目標にする本を決めて、それを根気強く読んでみるのも良いかもしれないですね。
いずれにしても、自分に合う形で読み続けることが一番です。

多読中に精読を組み入れる

多読に慣れてくると、リーディング学習では多読しかしなくなる人もいます。
もちろんそれはそれでかまいません。
しかし、多読の途中で部分的に詳しく知りたくなることもあります。この文章の意味はきちんと理解したい、とか、この熟語の意味は確認しておきたい、ということはたまに起こるはずです。
そのような時は、遠慮せずにじっくり読みましょう。
一つの記事の中、あるいは1回の多読学習の中で多読と精読を組み合わせても何の問題もありません。

人によっては、1回目は辞書を使わずに読み、2回目は精読をする、という人もいるようです。
しかし、私にはこの方法は合いませんでした。
2度読むことがわかっていると、1回目に読むことの意味づけが難しくなります。
そしてなにより、さらっと読んで内容がわかった記事を、わざわざ分析しながらもう一度読みたくない、という気持ちが強いです。
そのため、どんなものでも基本的には1度しか読まず、必要だと感じた時点で辞書を使っています。

その日の気分によっても変わりますが、私がTIMEを読む時は、短い記事では辞書を使いながら細かい部分まで丁寧に読みます。一方で長い記事では辞書を全く使わずに読むことが多いです。
目的に合わせて多読、精読をしていくことで、より正確に、より多くの英語を読むことができるようになります。

おすすめ多読教材

ここまで多読学習について説明してきましたが、いざ本を選ぶとなるとなかなか難しいものです。
英語力によって、読めるものが限定されます。適切な教材を選べなければ、多読が軌道に乗る前に挫折しかねません。
そこで、私が実際に読んだものを中心に、どのような教材が多読に適しているかを紹介します。
(私が行った多読学習に関しては、「私の多読の経験」に詳しく書いてあります。)

graded readers

graded readersとは、英語学習者のために書かれた本で、使われる単語や文法がレベルによって調整されています。
大きな本屋では、洋書と英語学習コーナーの間くらいに置いてあります。
レベルは5~6段階ありますが、出版社によってレベルによる難度の差があるようですので、購入する前には数ページ読んでみて、楽に読めるものを買うのが良いでしょう。
つい初めから高いレベルを選びがちですが、特に初めの1冊では無理をしないことが重要になります。

また、graded readersは実在する小説等を易しく書き直してあるものも多く、そのような本では、リライトする人の能力で読み易さに大きな違いが生じます。
本によっては、ネイティブが読んでも全く理解できないような出来の悪い本もあるようですから、読みにくい本は読むのを中断し、新しい本を選ぶことも必要です。

子ども向けの本

小さい頃に日本語で読んだ子どもの本を、英語で読むのも効果的です。
1度でも読んだことがある本であれば、ある程度内容がわかっている分、英語が難しくても話の流れを見失うことがありません。
同時に、細かい部分までは記憶していないため、楽しんで読むことができます。
たとえ良く覚えている話でも、日本語と英語の表現の違いがわかって、新たに発見できることも多いでしょう。
多少難しい本であれば、日本語で先に読んでから英語で読むとずっと読みやすくなります。

子ども向けの本が良いもう一つの点は、表現が自然であることです。
上で紹介したgraded readersは、ノンネイティブ向けに書かれているため、学習者が理解しにくい表現はほとんど使われません。
子ども向けの本であれば、ネイティブが自然に使う言い回しがスラングも含めてどんどんでてきますので、graded readersを読んでいる時とは異なる感覚で読むことができます。
私の場合、graded readersよりも、子ども向けの本の方が合っていました。

日本語で読んだことのある小説

graded readersや子ども向けの本がすらすら読めるようになっても、すぐに大人向けの小説が読めるわけではありません。
まず、単語が大きな壁となります。
小説の場合、目安として9,000語を知っていなければすらすら読むことはできません。
また、本によっては、歴史や文化についての知識が十分にないと理解できないものもあります。

とは言っても、相当英語力がついてからでないと小説が読めないわけではありません。
子ども向けの本と同じように、日本語で読んだことのある本であれば、いくら難しい本であっても、全体の流れを追いながら読み進めることができます。
内容を知っていても、英語で読むことは日本語で読むこととは全く違います。
もともと英語で書かれた本であれば、日本語で読むよりもよく理解できる場合もあります。

日本語で読む → 英語で読む、というサイクルで数冊読めば、初めから英語で読む力はついているはずです。
その時点で、好きな本を読んでみましょう。
ただ、小説の難易度は様々です。子ども向けの本より簡単なものもあれば、TIMEの記事よりもずっと読みにくいようなものもあります。こればかりは読んでみないとわかりません。
買った本が全て読めるとは限らないので、難し過ぎると感じた本はしばらくとっておいて、数年後に挑戦するのが良いと思います。

興味のある分野の専門書、雑誌

専門書は難しい、という先入観があるかもしれませんが、自分の興味のある分野であれば、驚くほどすらすら読めるものです。
実際、専門書を難しくしているのは、その分野で使われている専門用語ですから、日本語で用語を知っている人には大きなアドバンテージとなります。
また、そういった専門用語は英語がそのままカタカナになっていることも多く、スペルから意味が簡単にわかります。

興味のある分野であれば、当然内容についてもわかっていることが多いはずですから、書いてあることが全く理解できない、ということはありません。
それどころか、日本語での知識が英語力の不足を補ってくれます。
ある意味、小説よりも簡単に読めることもありますので、ぜひ試してみてください。

Reader’s Digest

Reader’s Digestは、昔は英語教材として人気が高かったようです。
英語圏では、小学生でも無理なく読めると言われているため、小説や専門書よりもとっつきやすいかもしれません。
幅広いトピックがカバーされているので、まずは興味のある記事だけを読んでも良いでしょう。
広告もちょうど良い読み物になります。

文の構造も複雑ではありませんが、語彙レベルはかなり高いです。
私は、専門書もTIMEも辞書なしでたいてい読めますが、Reader’s Digestを読む時は辞書を使いながら丁寧に読むことが多いです。
口語表現や、様々な分野の用語がどんどん出てくるのです。もちろん、TIMEより単語レベルは低いでしょうが、ノンネイティブがすらすら読むのはなかなか難しいでしょう。

英検1級を受験する少し前に、Reader’s Digestの記事を辞書を使いながら丁寧に読んでみたところ、過去問の語彙問題に、Reader’s Digestで使われている単語が頻繁に出てくることに気づきました。
Reader’s Digestをじっくり読むことで、英検の語彙対策としてもある程度の効果が期待できるかもしれません。

TIME、The Economist

タイムやエコノミストを読むのは、英語学習者にとって大きな目標になります。
これらの雑誌をすらすら読むことは簡単ではありませんが、上で説明した多読を続けることで少しずつできるようになります。
(NEWSWEEKは、残念ながら電子版のみの販売になってしまったようです。)
1冊を1週間かけてほぼ全て読めるレベルであれば、定期購読をする準備が出来たと言って良いでしょう。

このレベルの雑誌になると、英語力だけでなく背景知識や英語圏の考え方を理解していないと理解できないものも多く、初めからすんなり読むのは難しいでしょう。
しかし、まずは日本語で知識を身に付けてから、と考えていてはいつまでたっても読めるようにはなりません。
私も、TIMEの定期購読を開始して半年~1年くらいは十分に理解できないことも多かったのですが、続けて読んでいるうちに背景知識が身に付いていきました。
日本語で(英語でも)新聞は一切読みませんので、実質TIMEとNPRニュースだけから外国のニュースや背景知識を学んだことになります。
やはり、TIMEを読めるようになるにはTIMEを読むのが一番です。

良く言われるTIMEとThe Economistの違いですが、私には良くわかりません。
イギリスのネイティブに聞いたところ、扱われているニュースの違いを除けば、どちらも大きな差はない、とのことでした。
アメリカのネイティブは、TIMEの内容は薄っぺらでたいしたことが書かれていない、というような内容のことを言っていました。
ちなみにそのアメリカ人は、イギリスで発行されているTHE GUARDIAN WEEKLYを定期購読しています。

1冊当たりの分量(TIMEは50ページ、The Economistは100ページ)や、定期購読にかかる金額を考えて、私はTIMEを読むことにしています。
The Economistは立ち読みをしたことがあるだけです。
もし、TIMEが完璧に理解できて物足りないと感じるようになれば、The Economistにしても良いのかもしれませんが、少なくとも私は、一生かかってもそのレベルにはなれる気がしません。
TIMEをどのように読むかは、「私の多読の経験」の私のTIMEの読み方を参考にしてみてください。

英字新聞

英字新聞も、読解量を確保するには良い教材になります。
ノンネイティブ向けのものから、専門的なものまで様々な種類がありますので、どれか1つを続けられれば力が付くでしょう。
語彙レベルも、TIMEや小説に比べると若干易しいようです。
(TIMEでは10,000語、小説では9,000語、新聞では8,000語が目安になります。→「TIMEを読むのに必要な語彙数は?」)

せっかく読むのであれば、1部買って1~2週間かけてじっくり読むよりは、毎日新しいものを少しずつ読む方が良いようです。

ただし、私は英語力が十分でない頃に英字新聞の定期購読をして完全に失敗しましたので、それ以来まったく読んでいません。
日本語で日頃から新聞を読みなれている人であれば、英字新聞も抵抗なく読めるのではないかと思います。