英検1級二次試験受験記② ~当日編~

英検1級二次試験受験記② ~当日編~

会場到着~試験まで

2012年7月8日受験。会場は日米会話学院、9時15分集合でしたので、9時に会場に到着するようにしました。
携帯電話の使用は禁止で、袋の中に入れて首からかけます。初めは控え室のような場所に通されました。

ここで周りの様子をうかがっていると、だれも音楽や英語を聞いていないことに気づきました。
実は携帯電話だけでなく、電子機器は全て禁止だったようです。
そんなこと受験票には書いてありませんでしたから(携帯電話の使用は禁止、とは書いてあります。等という一文字の中に色々なものが含まれているとは…)、私は待ち時間にNPR NEWSを聞くつもりでした。
英語をたくさん聞けば発音も(それなりに)自然になるし、英語がすらすら出てきます。
しかし誰も英語や音楽を聞いていないので諦めました。
一応、係員に確認してみましたが、ダメとのことでした。
英語を話す試験の前に英語を聞いてはいけないとは、なんとも不便なものです。
せめて係員が全て英語で説明してくれれば良いんですけどね。

しばらくその控え室で待たされると思っていると数分ですぐに移動になり、面接を行う教室の前で待機することになりました。
私の前には3人並んでいました。
リスニングができないため、仕方なく持っていたTIMEを5ページほど読みました。
緊張していて内容は全く頭に入りません。
それでも英語で話すウォーミングアップにはなったと思います。
理由を書き出したメモは結局見ませんでした。

この時、実は一つだけ気にかかることがありました。
知り合いのあるアメリカ人が、数年前に英検1級の試験官をしていたことがあるのです。
今回は試験官をしているのかもわかりませんが、万が一私の面接官がその人だったら、お互い気まずいですし、試験に集中しづらくなりそうです。
ラッキーなことに、教室のドアにはガラス窓のようなものがついていて、廊下から中を見ることができました。
試験官は見たことのない人でした。
これで安心して試験を受けられると感じました。

二次試験本番

いよいよ私の番になりました。
面接官は二人とも感じの良い人で、少し緊張が解けました。
最初の1分は簡単なフリートークです。
自己紹介、ここまでどうやって来たか、週末の過ごし方などを聞かれることがわかっていましたので、それぞれの問いに答える準備はしてありました。
ここでの目的はお互いを知ることですから、できれば少し面接官を笑わせたいと考えていました。

ここからは会話形式で覚えている限り、面接の様子を再現してみようと思います。
もちろん大まかな内容だけで、どのような表現を使ったか等の細かい部分までは覚えていません。
文法のミスやいい直しは当然ありました。

面接官①: アメリカ人男性
面接官②: 日本人女性

フリートーク

面接官①
「あなたのことについて聞かせてください。」

想定通りの質問です。


「英語教師をしていて、中学、高校で教えています。数年前からアメリカの大学院の日本校でTESOLを専攻しています。
英語の教え方について勉強しています。大学院での勉強に集中したかったので、3月で仕事を辞めました。」
面接官①
「大学院で学んでいることは中学や高校で教える時に役立ちますか。」

「役立ちそうなアイディアはたくさんあります。しかし、日本人の英語教師は大学入試のために主に訳読を教えなければならないので、コミュニケーション重視の指導はできません。」
面接官②
「訳読を教えるのは好きですか。」

「好きです。生徒が難しい文章を読む時の助けになるからです。」

具体的にもっと説明したいところでしたが、時間もないので簡単にすませました。

面接官②
「日曜日は何をして過ごしますか。」

予想していた質問がきました。


「今は仕事をしていませんので、私にとっては毎日が日曜日みたいなものです。」

二人とも笑ってくれました。
しかし、ここでベルが鳴ります。
なんとタイミングが悪い。
日曜日の過ごし方をいちおう話し始めましたが、ネイティブの面接官にさえぎられてしまいました…

面接官①
「では、手元にある紙を表にして、1分間でトピックを決めてください。」

紙をめくり、話せそうなトピックを探します。
1つだけ、これだ!と思うトピックが見つかりましたが、念のため最後のトピックまで確認します。
集中していたせいか、10秒で最後まで目を通すことができました。
(無理だと判断したトピックは最後まで読んでいません。)
選んだのは、「現代社会の人々はより孤立してきているか」という内容です。
残りは50秒あります。しっかりと3つ理由を考えることができました。

面接官①
「ではスピーチをお願いします。」

ショートスピーチ


「私は現代社会の人々は孤立していない、間違えました。現代社会の人々はより孤立してきていると思います。」

I think で始めれば良かったのに、I don’t thinkと言ってしまい、途中で間違いに気づきました。
すぐに初めからやり直しました。面接官に「あれ?」という顔をされました。

「第一の理由として、家族のサイズが小さくなっていることがあります。私の父親は兄弟が8人いました。」

父親を合わせて8人兄弟なので、7人の兄弟がいる、が正しいのですが、日本語の発想でうっかり間違えました。
まあ良しとします。それから父親はもう亡くなっていますので、hadという過去形を使った方が良いだろうなと考えて、一瞬、間があいたと思います。

「当時、それは珍しいことではありませんでした。
しかし、今では多くの家庭で子どもが1人か2人しかいないのが普通です。
そうすると家族内でのコミュニケーションが少なくなります。」
「第二の理由として、テクノロジーの発達によってコミュニケーションの質が低下している面があります。
数日前にニュースで聞いたのですが、専門家によると、最も効果的なコミュニケーションはface to face(日本語訳がわかりません…対面形式ですか?)のものです。
eメールが最も良くないとされています。
相手の表情が読めないからです。
最近はeメールやFacebook、ツイッターを使ったコミュニケーションが多くなっています。
まあ私はFacebookもツイッターもしたことがありませんけれども。
このようなコミュニケーションツールを使うことで、コミュニケーションの質が悪くなっています。」

eメールだけで話す予定でしたが、とっさにFacebookやツイッターといったテクノロジー関係の語を入れてみました。
知らないことをあとで突っ込まれるといやなので、自分はやったことがない(事実です)と言うと、試験官は笑っていました。

「最後の理由として、現代の人々は昔よりも忙しくなっていて、家族や友人と話す時間が十分にないことがあげられます。
例えば私の姉は小学校の教員をしているのですが、遅い時は夜10時か11時まで仕事をしています。
土曜日や日曜日に出勤することもよくあります。
忙しいことで家族と過ごす時間が減り、それがコミュニケーションの減少につながります。」

話すことがなくなってしまいましたので、まとめを言おうとした瞬間、ベルが鳴りました。
今思えば、無理やり結論を言ってしまっても良かったようです。
もったいないことをしました。

面接官①
「興味深いですね。ではあなたは、現代人はより孤立してきていると考えていて、その理由は、家族のサイズが小さくなっている、現代の人はより忙しくなっていてコミュニケーションをとる時間が減っている、テクノロジーの発達によってコミュニケーションの質が低下している、と考えているのですね。」

面接官が私の要点を理解してくれているようで一安心です。
さらに、理由の順番は違いますが、向こうで私のスピーチをまとめてくれたので、自分で何をしゃべったのかを確認することができました。
必死に話していると内容を忘れてしまいがちですからね。

Q & A

面接官①
「では質問にうつります。スピーチの中でFacebookについて話していましたが、Facebookのようなテクノロジーの発達によって生まれたツールはコミュニケーションを促進すると思いますか。」

「コミュニケーションの機会は生まれると思います。しかし、量と質の問題で、いくら知り合いがたくさんいても、表面的な関係では良いコミュニケーションはできないですし、そのような仲間を頼りにして重大なことを相談することもできません。」
面接官①
「あなたはスローフードという言葉を聞いたことがありますか。スローフード・ムーブメントはコミュニケーション活性化のための解決策になると思いますか。」

「そうですね。スローフードによってコミュニケーションが促進される面はあると思います。しかし、都心の人々は十分な土地を持っていません。そういう人々は野菜を作りたくても作れません。スローフード・ムーブメントは多くの人にとって効果があるとは思いません。」

ここで私はスローフードを、自分で土地を借りて農業をすることだけしかイメージできませんでした。
おそらく面接官は、家族で一緒に料理を作ったり、地域の人が集まって伝統料理を学んだりすることも含めてスローフードと言ったのでしょう。
会話がかみ合いませんでした。
もう一度、別の表現で同じ質問をされましたが、私もほぼ同じ答えしかしませんでした。

面接官②
「あなたは家族のつながりが希薄になっていると言いましたが、家族の絆を強くするために一緒に食事を取ることは良いことだと思いますか。」

「一緒に食事をする時間が取れれば、それは良いことだと思います。しかし、多くの人は忙しくて、食事を家族一緒に食べることができません。私はアメリカに留学したことがあるのですが、ボストンの家族は一度も一緒に食事をしていませんでした。」

なんだかよくわからなくなっていて、自分の体験を入れてしまいました。
短い答えになるよりはましだと思いましたが、どうなんでしょうね。
ただ、面接官は私が話した内容に驚いてくれました。

面接官②
「家族の絆を深めるために政府は十分な役割を果たしていると思いますか。」

「思いません。私の姉は子どもが1人いますが、もう1人子どもがほしいそうです。しかし…政府からの援助がほとんどないため、余裕はないのです。」

butと言ってからしばらくとまってしまい、なんとか一言付け加えました。
付け加えた部分は文の形になっていなかったかもしれません。

面接官②
「では、家族の絆を深めるために政府はどのようなことをしたら良いと思いますか。」

この時は、答えが一つも浮かびませんでした。
どうしようかと思っている時にベルが鳴りました。助かりました。
この後は何があるのだろうと注意して聞いていると
「もっとたくさん話したいところですが、残念ながら時間になってしまいました。今の質問に関しては後で考えておいてください。ではお帰りください」、と言われました。
つい「終わりですか。」と聞いてしまいました。

あっという間に10分が過ぎたようでした。
普段は積極的に話すことは少なくても、話さなければいけない状況にある時は、言葉が出てくるものだと感じました。
ただし、他のトピックについては話す内容が全くありませんでした。
1つだけ話せるトピックがあって運が良かったと思っています。

結果 70 / 100 点 合格

Short Speech 21 / 30
Interaction 21 / 30
Grammar and Vocabulary 14 / 20
Pronunciation 14 / 20

分野別得点は、ショートスピーチ21点、インタラクション21点、文法+語彙14点、発音14点でした。
つまり、4項目の全てで試験官の評価が5段階の3と4に割れたということです。
私の予想では、ネイティブがスピーチと発音に4をつけて、日本人がインタラクションと文法+語彙に4をつけたのではないかと思います。

実力を完全に出し切っての得点でした。
ショートスピーチでは24点ほしかったですね。
内容的には改善の余地がまだたくさんありますが、自分ではそれなりに満足できる出来でした。
インタラクションでは、かみ合わない答えがあるにもかかわらず、良い評価がもらえたと思います。
勢いでごまかせたようです。

文法+語彙の評価

文法+語彙や発音での点数は思ったよりも良いものでした。
文法+語彙というのは、評価基準があいまいで対策がたてにくいところです。
私は何度か文法のミスをしたと思いますし、難しい単語は一切使っていません。
一番難しかったであろう単語は、表面的な、と言った時のsuperficialくらいでしょうか。それでも7割もらえたわけです。

文法+語彙の項目で8割、9割を目指す、あるいはスピーチの質をもっと向上させるためには、適切な場面で難しい単語を使うことが必要になるのかもしれません。
しかし、まずは自分にできる範囲で無理せずに話すことが必要でしょう。
それができれば英検1級二次試験の合格には十分なようです。

発音の評価

発音の評価に関しては満足しています。
私が一番重視していることは、発音が通じるかどうかです。
もちろんネイティブのような発音ができるにこしたことはありませんが、様々な研究から、外国語でネイティブ並の発音を身につけることはほぼ不可能であることがわかっています。
2歳から第二言語を学び始め、日常的にその言語を使っている人でさえ、ネイティブとは発音が異なる、という研究結果もあります。
それが事実だとしたら、中学生になってから英語を始めた日本人が、限られた学習時間の中でネイティブのような発音になれるはずがありません。

不可能な目標を目指すよりも、現実的な目標をたてるべきです。
つまり、通じる発音が大切なのです。日本語訛りでもかまいません。
私の発音はネイティブの発音とはかけ離れています。(念のため書いておきますが、カタカナ発音ではありません。)
それでも、どのような国籍の人にもほぼ100%通じることがわかっています。
ネイティブはその部分を評価し、日本人試験官は、日本人訛りを良く思わなかったのだと思います。

評価方法について

70点は全体として喜べる点数ではありません。
しかし違う見方をすると、5段階で2以下をもらう項目が一つもなかったことは良いことです。
都合の良い見方をすれば、どの項目においても英検1級レベルに達していないものはなかった、とも言えます。

私は評価について学んだこともあります。
5段階評価を多くの人にしてもらうと、1や5をほとんどつけないそうです。
人間の心理として端は選びにくいようです。
A, B, C, Dの4択の試験でも、積極的にAやDを選ぶ人ってほとんどいないんですよね。

そう考えると、英検でも1や5はあまりいないと思います。
5は長期留学者や帰国子女、知識の多い人にはつくかもしれません。
それでも多くの人が2~4中心の評価になるはずです。
その時、いまいちだと感じたら2、まあまあじゃないかと感じたら3、結構良いと感じたら4(特別良ければ5)、そのくらいの基準で評価がされていると思います。
この部分はいまいちだな、と思われる項目を少なくすることが合格につながりそうです。

英検1級を取得して感じたこと

二次試験では運もあって、1度で受かることができました。
終わってから考えてみると、二次試験の準備ではかなりのプレッシャーを感じていました。
しかし、その中で対策をして試験を受けたことで、スピーキング力が1段上がったと思っています。
なによりも自信がつきました。

合格後に気づいたことですが、誰かから「英語話せますか?」と聞かれても、今は自信を持って「話せる」と答えられます。
英検1級に合格する前には考えられないことでした。
そのような気持ちを持てるようになったことが一番大きな違いかもしれません。

点数自体は100%満足できるものではありませんでした。
どのようなトピックが出ても話せるような知識、それを表現する英語力がなければ、本当の意味で高いレベルの英語を話していることにはなりません。
これから先も普段の学習を続け、話せる内容の幅を広げていきたいと思っています。