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ヤフーのトップに掲載されていた最近話題の教育法です。同じテキストを何度も繰り返し学習することにより、学習効果が高まるということのようです。
具体的には、
1巡目に絵を見ながら全文リスニングだけを実施。
2巡目は音を聞いて単語や短文を正しく並べ替える作業を繰り返す。
3巡目は教科書を使って音読。
4巡目で一部穴開きの本文を音読し、5巡目で内容を友達に話す。
(リンク先より引用)の流れだそうです。
確かに、学習初期の段階では音から英語に触れる方が効果的ですし、スピーキングに重点を置く指導も役には立つでしょう。今後の中学英語教育でのスタンダードになっていくかもしれません。
しかし、この方法にも弊害があることを教える側は理解しているでしょうか。上記の学習法では、文法や正しい文章の読み方の説明が抜けています。仮に日本語訳を渡したとしても、文の細部の構造がわからないまま、(正しい解釈をした)結果としての訳が示されるだけですので、生徒は、自力で正確に文章を読むことはできるようになりません。
中学レベルの簡単な文章や、英検準2級程度なら大丈夫かもしれません。しかし、大学入試レベル、あるいは、実際の英語圏で発信される文章になると、きちんとした文法力、解釈力なしに内容を正しく理解することは不可能です。私の塾「英語総合トレーニング塾」でも、音から学習を始めて長年学習しているけれども、文法、読解が十分にできないために通い始めた、という人も少なくありません。一定レベルを超える英語力を身につけるためには、読解力は不可欠であり、読解力を伸ばすためには、文法、解釈の細かい知識まで要求されるのです。
もう一点気になるのは、学習の初期段階から発話を重視している点です。スピーキング力の向上のためには、スピーキングをしなければならないことは当然です。しかしながら、正しい英語が十分にインプットされていない状態でのスピーキングは危険も伴います。
英語教育の世界では、fossilization(化石化)という呼び方をしているもので、学習初期の段階で間違った英語を発話し続けていると、次第にそれが定着してしまい、文法等の誤りが直りにくくなってしまうのです。ひとまず英語を使っているのは良いのですが、どのような弊害があるのか、その弊害に対処するためにはどのような指導が必要とされるのか、まで情報共有できているのかが気になります。
説明なしでひたすら繰り返すだけ、という学習法は、世界の言語学習においては一般的ではありません。日本では、母語を習得するのと同じ方法で、自然に外国語も身につけられる、と考える風潮がありますが、そのような学習法は世界ではほとんど採用されていませんし、仮にそういった学習で多少なりとも効果を期待するとしたら、今の何十倍、何百倍もの学習時間が必要になります。
今後日本が国際的に英語で後れをとらないためには、世界でスタンダードとなっている英語教授法を積極的に取り入れなければなりません。残念なことに、英語で文献を読みこなし、世界で認められている正しい指導方法を取り入れることができている人はごくわずかです。今後、このブログや、英語高地トレーニングを通して、正しい英語学習法を伝えていきたいと思っています。