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バランスの良い学習法
トップページの基本的な考え方 3. バランスの取れた学習をするで紹介したように、英語力を高めるためには以下の4種類の要素を組み合わせる必要があります(Nation & Newton, 2009)。
- meaning-focused input(何かを知るために読む、聞く)
- meaning-focused output(何かを伝えるために話す、書く)
- language focused learning(言語自体についての学習)
- fluency development(流暢さの訓練)
トップページでは、主な学習法がこれらの4つのどれに当てはまるか簡単に分類をしてみましたが、現実的にはこれほど簡単に分類ができるわけではありません。
1つの学習が2つ以上の要素にまたがっていることもあります。
今回は、様々な学習法がどの要素にどの程度の割合で当てはまっているかを調べ、効果的な学習法について考えてみたいと思います。
英会話
英会話学校に通う
英会話学校では、英語講師や生徒と会話をすることが主な活動になります。
その場合は1. meaning-focused input と 2. meaning-focused output の2つが中心になります。
日本で普通に生活をしていて、バランス良く1と2の機会を見つけることは簡単ではありません。
その点では、英会話学校に通うことは効果的であると考えられます。
注意しなければならないのは、この学習法の場合、inputとoutputの時間が限られている、ということです。
英語圏で生活している場合、1日当たりに少なくとも4時間以上はinputがあり、2時間はoutputをするでしょう。
英会話学校だけでこの量を確保するためには、1回2時間の授業を週に3回取って、ようやく海外での生活の1日分、という計算になります。
しかしながら、週に1回、会話学校に通っているだけで満足している人も少なくありません。
学校以外で、inputとoutputの時間を意識的に増やすことが上達につながりそうです。
英会話の本で学習する
英会話の本では、日常で使うであろう表現が数百から数千まとめられていることが多いようです。
4つの要素に当てはめると、3 language focused learning が中心で、1 meaning-focused input と4 fluency development もわずかに含まれそうです。
CDを聞く、または様々な表現を読むことによって意味理解を伴ったinputがあり、繰り返し学習によってその表現がスムーズにわかるように(使えるように)なるからです。
しかしこの学習法では、自ら考えて、意味を伝えるために行うoutputが全く含まれません。
会話本でありながら、outputの練習はほとんどできないのです。
この部分に関しては、別にoutputの機会を見つけなければならないでしょう。
多読
通常の多読
多読は1 meaning-focused input のための最も優れた方法の1つです。方法も1通りではありません。
文章の読み方によって1、3、4を2つ以上を含めることが可能です。
最もオーソドックスな多読は、7割以上の理解を基準にして、辞書の使用を最小限にする方法です。
このような多読では、主に1 meaning-focused input を行うことになります。
内容理解を重視する
次に、内容を正確に理解したい文章を丁寧に多読する場合を考えてみます。
「読解速度を上げるには?」の速読が必要ではないわけで説明したように、このような時には細部にまで注意を向けるため、読解速度は遅くなります。
この時、文中で使われている単語や文法はほぼわかっていて、内容をより正確につかむことだけに意識が向いているならば、1 meaning-focused inputが中心になります。
辞書使用の有無に関わらず、単語や文法に意識が向いている時には、1 meaning-focused input と同時に、3 language focused learningの割合が高くなります。
易しめの文章を読む
単語や文法がほぼわかっていて、簡単な文章を気楽に読む時のことを考えて見ましょう。
この時は言語自体に意識を向ける必要がほとんどありませんので、3 language focused learning の要素が占める割合は非常に少なくなります。
一方で、4 fluency development が学習の中心となります。
意識的に速く読むような速読の練習を行う時は、単語の難易度に関わらず、4 fluency developmentの要素が1 meaning-focused input の要素よりも大きくなるでしょう。
このように多読の方法を変えることによって1、3、4の全ての要素をカバーすることができます。
唯一、多読に欠けているのは、2 meaning-focused output です。
2の要素を多読と結びつけるのは容易ではありませんが、読んだ内容について自分の意見を書くことが、1つのoutputにはなりそうです。
この時、文法ミスや細かい部分は気にしないようにすることで、意味を伝えることを一番に考えたoutputができます。
多聴
ニュースを聞く、ドラマ、映画を観る、スポーツ中継を観る
これらの学習はどれも、1 meaning-focused inputとなります。
リスニングでは音がどんどん流れていきますので、3 language focused learning をすることは、リーディングに比べると難しくなります。
1つの映画を繰り返し観ること、字幕を利用して単語や会話表現を覚える作業をすることは3 language focused learning と4 fluency development にもなります。
発音の真似をすることも3、4に含まれるでしょう。
これが更に強調された学習法がディクテーションやシャドーイングで、こうなると言語についての学習ばかりとなり、1 meaning-focused input はほとんど含まれないことになります。
日本人は細部までこだわる傾向が強いようですから、3 language-focused learning をやりすぎないように気をつけることも大切になります。
この学習法でも、2 meaning-focused outputが全く含まれません。
このようにしてみると、outputの機会を作るのが難しいことがよくわかります。
outputの学習
メールを書く
英語でメールを書くことで、meaning-focused output が気軽に行えます。
初めのうちはどうしても文法や単語にこだわって、辞書を使うことが多くなりがちですが、慣れてくると意味を伝えることが優先になります。
特に携帯でメールを打つ時にはスピードが重要になりますので、2 meaning-focused output を行うのに適しているでしょう。
日常的に英語でメールのやりとりをする相手がいると、output能力がある程度鍛えられそうです。
英語でのチャットも良いですね。日本に住んでいる限りは、このようにしてoutputの機会を地道に増やしていくしかないでしょう。
日記をつける
メールと同じ理由で、outputをするための良い方法です。
メールと違うのは、一人で行うために、書く必然性がないことでしょうか。
私は日記をつけることが好きではありませんので、英語の日記は一度も書いたことがありません。
日本語で日記をつける習慣のある人は、ぜひ英語で日記をつけてみてください。
この時も、細かい表現にはこだわりすぎないほうが良いと思います。
スピーチをする
日常的にスピーチをする機会は少ないですから、スピーチをするのは英検やTOEFLといった試験のための対策が中心になります。
スピーチでは、話す内容と同時に形式や単語、文法、発音にも気を配る必要がありますから、2 meaning-focused output と3 language focused learning を同時に行うのに最適です。
繰り返し練習することによって4 fluency development にも効果があるでしょう。
スピーチの注意点は、模範解答やテンプレートに頼り過ぎないことでしょう。
自分のアイディアが全くない状態で、模範解答を暗記し、シャドーイングしたところで、自ら考えて話す力は身に付きません。
また、テンプレートに頼って決まりきった形で話す練習しかしていないと応用が利かず、ワンパターンのスピーチしかできないことになってしまいます。
模範解答、テンプレートを適度に利用した上で、自らの考えを伝える練習をすれば、様々な場面に応用できるスピーキング力が身に付くはずです。
テスト対策全般
テスト対策自体は、形式の決まっている試験で結果を出すためには不可欠です。
しかしながら、テスト対策で付く英語力は限られています。
TOEIC、英検、TOEFLで共通する、リーディング、リスニングの問題を例に考えてみましょう。
リーディングでは、意味を理解しながら読む必要があるとは言え、学習時には、文中の知らない単語や文構造を理解し、何度も音読をし、設問に答えられるようにすることの方が重要です。
そうすると、3 language focused learning と4 fluency development の面ばかりが強調されることになります。
同様にリスニングでも、設問を分析し、聞き取れない音が聞き取れるようになるまでディクテーション、シャドーイング、リスニングを繰り返すことになります。
こうした学習は1 meaning-focused input にはなりません。
試験対策とは別に、多読、多聴を繰り返す必要があるのはこのためです。
学習のほとんどがテスト対策に偏ってしまっている人は、普通に読む、聞く活動を意識して増やさなければなりません。
4択の文法問題は、まさに3 language-focused learning の代表となるものです。
このような学習だけしていて英語力が向上するはずがありません。
文法自体は、きちんとした英語力を使えるようになるために欠かせない要素ではありますが、日本人が時間をかけすぎている学習法の一つでもあります。
英語学習=4択の文法問題を解く、と考えているようでは、何年かかっても英語力は伸びないことを理解しておいたほうがよいでしょう。
現にTOEICで出題される語法問題は、4択を数千題解くよりも、大量に読書をすることで点数が取れるように作られているような気がします。
バランスを保つために
これまでに紹介した方法を組み合わせることで、4 fluency development は意識しなくても自然にできるようになります。
同じ学習を繰り返すことで、その学習がより素早く、楽に行えるようになるからです。
ただ、速読に関してだけは、特別な学習をすることで更に効果が上がります。
速読に特化した訓練法については、「読解速度を上げるには?」の方法2. Timed Readingを参考にしてください。
ぜひ、この4つの要素を参考にしながら、自分が行っている学習がどの要素にどれだけ当てはまっているかを考えてみてください。
不足している部分を補うことで、長期的に見てバランスの取れた英語力をつけることができます。
outputの機会をどう作り出すか?
この記事を読んで改めて、独学ではスピーキングの機会を作るのが非常に難しいと感じた人も多いでしょう。
実際、日本に住んでいて学習の1 / 4をmeaning-focused outputに使うことはほぼ不可能です。
そこで、独学でもできるスピーキングの練習、特に2 meaning-focused outputに的を絞った学習法を考案してみました。
次の記事で紹介します。