読解速度を上げるには?

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速読②
読解速度を上げるには?

大学生の読解速度

読解速度について」で紹介したように、気楽に読書をする時、英語のネイティブは1分間に約300語のスピードで英語を読みます。
ノンネイティブであれば、知らない単語、文法がない文では、1分間に250語の速さで読むことが目標になります。
しかし、このスピードで英文を読める日本人はごくわずかです。

日本の大学1年生であれば、読解速度は1分間に100語以下である場合がほとんどです。
(私は、大学3年の時点でも読解スピードは1分間に97語でした。)
ここから、どのようにして250語読める状態になれるでしょうか。今回は2つの方法を紹介したいと思います。

方法1. 多読

なんと言っても基本は、英語をたくさん読むことです。
たくさん読まずに速く読めるようにはなりません。
左の表は、英語圏の子どもの平均読解速度です(Carver, 1992)。
(wpmとは、words per minuteの略です。日本の学年で考えればGrade 2は小学2年、Grade 12は高校3年に該当します。)基本的に、母国語では速読のトレーニングはしませんね。
この表から、1年間多読を続けていれば、特に意識しなくても読解速度が1分間に14語程度は上がる、ということがわかります。
多読による効果は、特に英語を読みなれていない人に大きいようです。
ある程度英文の構造がつかめることが前提ですが、人によっては、多読によって1年間に20~30語速く読めるようになることもめずらしくありません。
私も大学3年から4年の終わりまで2年間、速く読むことを全く意識せずに多読を続けました。
その結果、読解速度は97語から140~150語にまで上がりました。
2年間で40~50語、1年間あたりで20~25語速くなっています。このようにして読解速度が向上すると、ある時点で伸びがとまります。
だいたい1分間に150語の速さに達した頃でしょうか。
ノンネイティブの場合、どうしても頭の中で母国語に置きかえて理解することが多いですから、自然にまかせていてはネイティブの読むスピードまで到達するのは難しいのです。
(私も140~150語に達してからはしばらく伸びませんでした。)
そこで、別の方法を用いてスピードを上げる必要が出てきます。

学年 読解速度(wpm)
Grade 2 121
Grade 3 135
Grade 4 149
Grade 5 163
Grade 6 177
Grade 7 191
Grade 8 205
Grade 9 219
Grade 10 233
Grade 11 247
Grade 12 261

方法2. Timed Reading

Timed Readingとは、短い文章(200~1,000語程度)を、時間を測って読む練習法です。
これを行うことで、数分という短い時間に集中して速読する力がつきます。
あまり多読の経験のない人や、受験英語ばかり読んできた人は、全ての文を精読する傾向があります。
そのような人がTimed Readingを行うことで、文の概要をつかみながら、素早く読むコツがつかめるようになります。

Timed Readingの行い方は以下の通りです。

  1. 語数が正確にわかっている文章を用意する
  2. 時間を測りながら文章を読む
  3. 内容が理解できているかどうかのチェックを行う
  4. 読解速度の計算を行う

1. 語数が正確にわかっている文章を用意する

できればTimed Reading用の教材を用意しましょう。専用教材であれば、文章のレベルが一定で語数が書いてあり、簡単な確認問題もついているからです。
残念ながら日本語で出版されているものでは、質の高い教材があまりないようですので、洋書が良いでしょう。
最初の1冊として『READING FOR SPEED AND FLUENCY』(Paul Nation・Casey Malarcher著)をおすすめしておきます。
このシリーズはレベル別に4冊出ているので、いくつかの文章を実際に読んでみて、無理なく読めるレベルのものを購入してください。

中級~上級者(多読の経験がそれなりにある人)には、『Advanced Reading Power 4』(Linda Jeffries・Beatrice S. Mikulecky著)がおすすめです。
こちらは確認問題の答えをチェックするために解答集を別途購入する必要がありますが、1つの文章が950語と長く、より実際の読書に近い形で練習ができます。
またこの本にはTimed Reading以外にも、役立つReadingの勉強法や情報がたくさん載っていますので、持っていて損はないでしょう

Timed Reading用の本を買いたくない人は新聞、雑誌、小説、graded readersを使った練習もできますが、その場合は語数を数えるのが面倒で、確認問題がなく、文の難易度が一定でない、という欠点があることを理解しておきましょう。
とは言っても、このレベルの素材を読むスピードを知りたいのであれば、新聞や雑誌を使うのが一番良いとも言えます。

その場合は、ネットで記事を見つけ、プリントアウトして練習すると良いでしょう。
パソコンの画面上で読むと、紙面で読むよりも読解速度が10%程遅くなるからです。
語数は、ワードに貼り付ければ簡単に確認できます。
1行あたりの語数を数えて、行数を掛けることで総語数を計算する方法もありますが、この方法ではかなり誤差が出ます。
やはり正確に数える方が良いでしょう。

私はTIMEを使って定期的に速読の練習をしていますが、定期購読している雑誌で速読を行い、TIMEのウェブサイトで記事の総語数を確認するようにしています。
なおTIMEの記事は、定期購読していないとウェブ上では一部しか読めませんので、注意してください。

2 & 3. 時間を測りながら文章を読み、確認問題を解く

速読用の教材が用意できたら、ストップウォッチを使って、読むのにかかった時間を測ります。
正確な情報を得るために、面倒でも秒単位まで測定しましょう。

読む時は、普段よりも少し速く読むことを意識してください。
大学院で習ったのですが、後の確認問題でいつも全問正解する場合は、十分に速く読んでいない、ということになるそうです。
Timed Readingで測るのは、気楽に文章を読むスピードですから、100%理解し、内容を細部まで記憶する必要はないのです。
実際、確認問題も大雑把な内容さえわかっていれば解けるように作られています。
もちろん、全部あっていてもかまいませんが、毎回全問正解を目指すのではなく、8割以上正解すればOKと考えてください。

さきほど、日本で出版されている教材に良いものが少ないと書きましたが、日本の教材では、ほとんどの場合確認問題が難しすぎます。
あるいは、ターゲットとする読者層をはっきり示さずに、難しい文章ばかり載せてあります。
確認問題が難しければ、文章を丁寧に読まなければなりません。また、文章自体が難しければ読解速度は遅くなります。
目的に合わせて、適切な教材を選ぶようにしてください。

4. 読解速度の計算を行う

読むのにかかった時間を秒になおしてから計算します。
例えば500語の文章を3分24秒で読んだとしましょう。
かかった時間を秒で表すと204秒。
文の総語数を秒で割って、60を掛ければ、1分間あたりに読める語数が計算できます。
上の例ですと、500÷204×60=147.05 . . . ですので、1分間に147語読めていることになります。

Timed Readingの効果と限界

上で述べたように、Timed Readingによって短期間で大幅に読解速度を向上させることも可能です。
人によっては、1ヶ月の訓練で50語以上速くなることもあるようです。
しかし、ちょっと考えてみてください。
1分や2分で集中して読む速さで、30分~1時間読み続けることはできるでしょうか?
あるいは、その速さで数時間読み続けることはできるでしょうか?

Timed Readingは有効ではあるものの、実際の読書でどれくらい役立つかははっきりわかりません。時間を測った時は速く読めても、普通に読む時にはどうしても遅くなるものですし、無理して速いスピードで読んでいてもすぐに疲れてしまいます。
Timed Readingを用いた実験では、練習が終わって数ヶ月すると、読解速度がピーク時よりも遅くなってしまう、という結果も出ています(Macalister, 2010)。
あくまでも一つの練習法としてとらえ、多読を中心に学習をする方が長期的にみてプラスになるでしょう。

私のTimed Reading活用法

私は、1,000語以下の短い文章で時間を測るのがあまり実践的ではないと感じたため、TIMEの長い記事(2,000~5,000語程度)を用いてTimed Readingをしています。
この練習のおかげで、長い記事でもなんとか200語以上の速さで安定して読めるようにはなりましたが、やはり普通の読書とは違って目が疲れることが多いです。

TIME以外でのTimed Readingは数えるほどしか行っていませんが、参考までに2011年7月の時点で、『READING FOR SPEED AND FLUENCY 1』の文章は1分間に300語の速さ、『Advanced Reading Power 4』の文章は250語の速さで読めました。
ただし、普段無理せずに読む場合はそれよりも遅くなっていると思います。

試験の文章での速読は?

Timed ReadingにTOEIC、TOEFL、英検等の文章を用いるようにすすめている人がいるようですが、私はこれには反対です。
読む目的が異なるからです。テストでは多くの問題に正解しなければなりませんから、ものによっては非常に注意深く読むことになります。
そのような読み方が求められている教材で速く読む練習をしても、正答率があがるわけもなく、あまり意味がありません。
テストではテストの目的に合わせて読むようにしてください。
(詳しくは「読解速度について」のTOEICで求められるスピードは?または、英検1級で求められるスピードは?を参考にしてください。)

速読力は必要か?

ここまで、読解速度を向上させる方法について述べてきましたが、本当に速読できる必要があるのでしょうか?
私は、速読は重要であるが、必ずしも必要というわけではない、と思っています。

速読が重要なわけ

速読が重要になるのは、主に試験の時、そして英語圏の大学等に進学した場合です。
試験で速読力が求められるのは当然ですね。
試験では、気楽に読むような速さで読むわけではありませんが、速く読める人の場合、試験でもある程度の速さで丁寧に読むことができます。
速読力のない人は、ゆっくり丁寧に読むことしかできません。

また、英語圏で教育を受けたい場合、速読力は必須です。
特にアメリカでは多くの本を読まなければなりません。
私の通っていた大学院では毎回30~50ページはリーディングの課題が出ていましたが、多くのアメリカの大学ではこれが普通であるようです。
ひどい時には、2日後までに100ページ以上のリーディング課題が出たこともありました。
このような時は丁寧に読んでいる時間がないので、どうしても速読することになります。

大量のリーディングをこなさなければならない時、人によっては、全部読まずに概要だけをつかむ読み方をしているようですが、それではどうしても細かい部分を飛ばしてしまうことになります。
実際、英語のネイティブは、どれだけたくさん課題が出ても全部読むことができます。(真面目な人に限りますが。)
ネイティブと比べると、ただでさえ英語力で差があるのに、リーディングの理解度でも差をつけられるわけにはいきませんから、私はなるべく全て読むようにしていました。
このような時に速読の力が非常に役立ちました。

また、速読がある程度できるようになって1分間に200語以上の速さでコンスタントに読めるようになると、リスニングが非常に楽になります。
(詳しくは「リスニング上達の過程」の英語の処理速度が上がるを参考にしてください。)
リスニングでナチュラルスピードの英語を処理するのに、余計なエネルギーを使わなくなる、という感覚です。
その状態になると、リスニングにかなり余裕ができますので、まずは200語を目標にしてみると良いでしょう。

速読が必要ではないわけ

速読力は必ずしも必要ではない、という理由は、文章を読む目的は様々であり、速読はその一部でしかない、と考えるからです。
先程の大学院でのリーディングの話に戻りますが、リーディングの素材によっては、丁寧に読まなければならない場合もあります。
特に難しい内容を扱っている場合や、新しい概念や専門用語を理解しなければならない場合、試験勉強のために読む場合、読解速度は遅くなります。
日本語でも、化学や歴史の教科書は速読できないですよね。

試験がある授業のリーディング課題では、私は重要な部分に線を引き、内容を頭で整理しながら読んでいました。
こうすると読解速度は1分間に100語にまで落ちます。
それでも線を引いたことによって、ポイントをつかむことができ、試験前に全文読み直さなくてもすむことが多く、役立ちました。

あるいは、好きな小説を読む時のことを考えてみてください。
夢中になって読んでいれば、何時間かかっても関係ありません。
たとえ読解速度が1分間に50語であっても、楽しんで長時間読めるのであれば何の問題もありません。
速く読める人でも、時にはゆっくり読んでみたくなることもあるでしょう。
速読が全てだとは思わない方が、色々な読み方ができると思います。

それでも、速読ができることで読書の幅は確実に広がります。
ある程度読解速度をアップさせたら、読む目的に合わせてスピードを変えていきましょう。